✅ ART(体外受精・顕微授精)へのステップアップ

〜共同意思決定(SDM)に基づくご案内〜

1. はじめに

不妊治療にはいくつかの段階があり、患者さんそれぞれの状況に応じて治療方法を選択していきます。
当院では、医学的な適切性と患者さんの価値観の両方を大切にしながら、一緒に治療方針を決定する「共同意思決定(SDM)」を重視しています。

2. 不妊治療のステップとステップアップの目安

  ① タイミング法:3~6回

  ② 人工授精(AIH):3〜6回

  ③ 体外受精・顕微授精(ART)
     ※状況により初期からARTを選択する場合もあります。また年齢や原因により前後します。

3. ステップアップ判断のポイント

・年齢(特に35歳以上は時間が重要)

・不妊期間、一般不妊治療期間・回数

・不妊原因(卵管閉塞、重症子宮内膜症、精液所見不良、卵巣機能低下)

・ご夫婦の希望やライフプラン

4. ARTの特徴

● メリット:妊娠率が高い、受精状況が確認できる

● デメリット:身体的・経済的負担

5. SDM(共同意思決定)

医療者と患者さんが情報を共有し、一緒に最適な治療を選択するプロセスです。
当院では無理に治療を進めることはありません。

6. 当院からのメッセージ

ステップアップは前向きな選択です。
ご納得いただいた上で一緒に最適な治療を選んでいきましょう。

✅ ARTにおける当院の院内体制について

● 当院では、体外受精・顕微授精を患者さん中心のチーム医療として行っています。

● 医師、看護師、メディカルコーディネーター、培養士、受付医療事務、心理士が連携し、治療方針の説明、通院中の不安への対応、卵子・精子・胚の管理、こころのサポートまで一体となって支援します。

● 培養室では、顕微授精システム、Piezo-ICSI、タイムラプス培養システムなどを活用し、胚の発育を見守ります。また、精子・卵子・受精卵の取り扱いでは2名以上のダブルチェックを行い、医療安全委員会による安全管理体制のもと、安心して治療を受けていただける環境づくりに努めています。

✅ 費用と保険・助成について

1. 不妊治療は保険が使えます

2022年4月より、体外受精・顕微授精などの不妊治療の多くが健康保険の対象となりました。 これにより、自己負担は原則3割となり、これまでに比べて費用負担は軽減されています。 また、条件によっては高額療養費制度も利用可能です。

2. 費用は「個別に異なる」ことが重要です

体外受精の費用は一律ではなく、以下のような要因で変わります。

• 排卵誘発の方法(薬の種類・量)

• 採卵数や受精方法(体外受精/顕微授精:個数)

• 培養期間と個数

• 胚凍結の有無(個数)

• 移植方法(新鮮胚/凍結胚)

• 追加検査や治療

そのため、「1回いくら」と固定ではなく、治療内容に応じて変動することをご理解ください。

3. 保険診療と自費診療

● 保険診療
• 費用負担が抑えられる
• 治療内容や回数に一定の制限あり
年齢制限:43歳未満まで、移植回数:40歳未満6回まで、40歳から43歳未満3回まで
• 治療開始前に計画作成が必要(ご夫婦での来院)

●自費診療
• 回数制限なし
• 先進医療や自由な治療選択が可能
• 全額自己負担
患者さんの状況によっては、保険と自費(先進医療)を組み合わせて治療を行うこともあります。

4. 助成制度について

体外受精に対する従来の助成制度は、保険適用に伴い原則終了しています。
現在は、以下のような補助制度が利用可能です。

● 鹿児島市の助成
• 保険診療の自己負担額の一部を補助
• 上限:年間5万円

● 鹿児島県の助成(先進医療):鹿児島市は対象外
• 先進医療費の一部を補助
• 上限:10万円

● 離島の方への支援
• 交通費・宿泊費の補助あり

※助成内容は自治体ごとに異なります。

5. 助成利用時の注意点

• 申請は患者さんご自身で行う必要があります

• 医療機関の証明書が必要になります(作成費用あり)

• 詳細はお住まいの自治体へご確認ください

6. 当院の考え方

不妊治療は「費用」だけでなく、 治療効果・期間・ご夫婦のご希望とのバランスが大切です。
当院では、医学的な観点に加え、 経済的負担も含めて丁寧にご説明し、
納得して治療を選択できるようサポートいたします。

✅ 転院時にご持参いただきたいもの

他院からの転院時は、これまでの治療内容がわかる資料をご持参いただくことで、スムーズに診療を進めることができます。紹介状がなくても受診は可能です。

• 紹介状(あれば)

• これまでの治療歴がわかる記録

• ART治療歴(採卵回数・胚移植回数がわかるもの)

• 検査結果(ご夫婦ともに・あれば)

• 治療計画に関する書類(あれば)

資料がすべて揃っていなくても問題ありません。可能な範囲でご準備いただければ、患者さまの状況に合わせて適切な治療をご提案いたします。