診察内容

問診、超音波検査、血液検査、精液検査、卵管検査、子宮鏡検査などからご夫婦の治療方針(体外受精や人工授精、顕微受精など)を決定します。

●排卵障害
 → 排卵誘発がメインの治療となります

排卵障害には大きく分けて二通りのタイプがあると考えてください。

①卵巣内の卵子は潤沢にあるが、そのため排卵が起きにくいタイプ

一般的に多嚢胞性卵巣症候群(PCOs: Polycystic ovarian syndrome)がこのタイプになります。排卵まで長い日数がかかったり、定まらなかったり、年に数回しか排卵しなかったり、全く排卵が見られないタイプもあります。

一人目を普通に妊娠・出産されてまだ比較的若い(35歳未満)のに二人目がなかなか出来ないという方の場合、PCOsもしくはPCOs様卵巣であることが多い様です。



月経開始した時点で脳の下垂体という部分から卵胞を発育させるFSH(Follicular Stimulation Hormone:卵胞発育ホルモン)というホルモン が分泌され、このホルモンが卵巣を刺激して卵子を発育させるのですが、PCOsでは卵巣の表皮が暑い、硬いためにこのホルモンが卵巣内に届かずに卵胞の発育へのスイッチがなかなか入らないという風にイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。このスイッチを入れる後押しをする(よりFSHを多く分泌させる内服剤:クロミッド、もしくは直接FSHを多く投与する:注射製剤の排卵誘発剤;HMG)のが排卵誘発剤です。

PCOsで排卵誘発を行うと卵胞の発育は順調になりますが、複数の卵胞が育ってくることが多く、時には5-6個から10数個の卵胞が発育してくることも稀ではありません。こういう場合に排卵を惹起するためにHCG(注射製剤)を使用すると、妊娠した際に三つ子以上の多胎になるリスクや、排卵後に卵巣が腫れてきたり腹水が貯留したりするOHSS(Ovarian HyperStimulation Syndrome:卵巣過剰刺激症候群)を引き起こす危険性が生じるため、HCGを投与せず、排卵を回避せざるを得ないことになります。このような排卵回避が続く場合には、発育した卵子を採取し、体外で受精させた受精卵を凍結して次周期以降の周期で凍結受精卵を使って融解移植を行う体外受精/全胚凍結に治療方法を切り替えた方が結果的に安全に妊娠できてより有用となります。

また、PCOsでは卵巣の表皮が厚く、HCGを投与しても卵胞が破れずに卵子が卵胞内に残ることが多く見られます。卵胞が全く破れず卵子が排卵されない状態が続く場合にも、体外受精に切り替える方が妊娠への近道となります。

PCOsではクロミッドでの排卵誘発を行った場合に4-5個以上の卵胞が発育することが多く、またクロミッドの服用を続けた場合に子宮内膜が薄くなるため、レトロゾール(フェマーラ)という内服薬(作用がやや弱く単一卵胞発育になりやすく、子宮内膜が薄くなる副作用が比較的少ない)を使用することがあります。

PCOsは妊娠の可能性は十分あるのですが排卵誘発で苦労することが多いとお考えください。
 
排卵障害のもう一つのタイプが

②卵巣内の卵子の残り数が少ないために排卵が起きないタイプ

このタイプでは年齢に比べて卵子の残存数が極端に少なかったり、高齢になっているために卵子の残存数が少なくなっていて排卵が不規則、もしくは無排卵となっています。残存卵子数が少ないとどんなに強力に排卵誘発を行っても発育してくる卵胞が1-2個しかありません。体外受精では採取できる卵子が少ないことは大きなdisadvatageになってしまいます。ただ、発育してくる卵子の質がたまたまその周期で良ければ通常治療でも体外受精でも妊娠は可能です。

POI(Premature Ovarian Insufficiency:早発卵巣不全)は40歳未満で残存卵子数の極端な減少(一般的に残存卵子が1000個を切ると無排卵となり閉経します)と無排卵もしくは稀発排卵を伴う状態を指し、排卵誘発が困難となります。この様な病態では無月経となってから治療開始までの時間が短いほどより妊娠の成果が得られやすい傾向にありますので、無月経が続く場合で妊娠を希望されているのであれば早めの専門クリニックの受診をお勧めします。

●︎子宮内病変(子宮内膜ポリープ、子宮内癒着など)
 → ポリープ切除、癒着除去などの処置、手術(連携病院へ紹介)

●︎卵管閉塞
片側
 → 通過側排卵時のタイミング、人工授精
両側
 → 体外受精、卵管鏡による開通術(FTカテーテル:県外へ紹介)

●︎精子の異常
軽度
 → 内服治療(漢方、ビタミンなど)
中等度
 → 人工授精、体外受精
重度
 → 体外受精/顕微受精

●子宮筋腫
 → 大きさや場所、年齢(卵巣年齢)によって手術、薬物療法

●︎子宮内膜症
 → 程度や場所、年齢(卵巣年齢)によって薬物療法、手術

●︎特に異常を認めない場合
 → タイミング療法6回 → 人工授精6回 → 体外受精
 へと段階的に治療をすすめていくステップアップ方式を標準とします。

一般不妊症

妊娠成立機序

タイミング療法、人工授精までの治療を一般不妊治療と呼びます。

自然排卵もしくは排卵誘発剤使用周期で月経開始13日目前後に来院していただき超音波検査で卵胞の発育状況をチェックします。

十分な大きさの卵胞発育が確認できれば、採血で卵胞ホルモン、黄体化ホルモンを測定し卵胞成熟度、排卵日を決定します。

その日にタイミングをとっていただくか人工授精を実施します。
その数日後に来院していただき超音波で卵胞が消失していることを確認できれば排卵が確定します。

高度生殖医療(体外受精/顕微授精/凍結胚移植)

妊娠成立の仕組み(人工受精とARTの違い)

高度生殖医療は生殖補助医療、ART(Assisted Reproductive Technology)と呼ばれるものです。

排卵誘発を行い卵巣にある卵胞を複数発育させ、発育した卵胞から直接卵子を採取し、体外において精子と受精させて、培養を行い発育が進んだ胚(受精卵)を子宮の中に戻します

受精の方法は卵子に直接精子をふりかける媒精という方法と、1つの卵子に対し1つの精子を直接細い針で注入する顕微授精の2種類あります。

精子の状態に問題がなければ、当院では初回の採卵の場合採取した卵子の数を2つに分けて媒精と顕微授精を行っていきます。

受精方法

受精卵は培養し採卵から2~3日後、もしくは5日後に子宮の中に戻します(胚移植)。

採卵周期の子宮の状態が移植に適していない場合は凍結を行い、別の周期で子宮内膜を整えたあとに融解移植を行います(凍結胚移植)。

受精卵が複数あり移植をしなかった胚は凍結が可能な状態になれば凍結を行い、妊娠が成立しなかった場合は次周期以降凍結した胚の融解移植スケジュールに入ることができます

凍結胚がない場合は再度採卵スケジュールに入ることになります。

ARTにステップアップされる場合は詳しい説明を受けていただいてから進んでいただきますので、詳しくはお尋ねください。

⚫️ 採卵・胚移植で利用していただく安静室のご紹介です。

⚫️ 採卵の様子を動画でご覧ください(局所麻酔)。

⚫️ 採卵の様子を動画でご覧ください(静脈麻酔)。

自己注射について

体外受精での排卵誘発ではスケジュールや卵巣機能などの個人差がありますが、平均で1週間前後、連日で排卵誘発剤の筋肉注射のために通院する必要があります。

お仕事をされていたり、事情があって注射の通院が困難な方には自己注射という選択肢があります。

看護師の指導の元に手技を習得していただき薬剤、注射器を持ち帰り、ご自分で皮下注射を行います。

通院時間、通院回数、通院距離を省略することが出来る有効な方法です。

ご希望のある方はスケジュールへ入る前にスタッフへお声掛けください。

自己注射の手順の動画です。

不育症

不育症とは、妊娠はするが流産・死産を繰り返し生児を得られない場合と定義され、妊娠22週未満の自然流産を連続して3回以上繰り返す場合の習慣流産も同意語として定義されます。

当院では以下の不育症検査を行っております。

  1. 問診(流産の回数・週数・心拍確認の有無などの流産歴、既往歴、家族歴
  2. 子宮形態(超音波検査・子宮鏡・卵管造影)
  3. 感染症検査(血中クラミジア抗体・膣分泌物培養)
  4. 内分泌検査(甲状腺機能検査・下垂体機能・糖負荷検査・黄体機能)
  5. 血液凝固因子
  6. 免疫学検査
  7. 夫婦の染色体検査

詳しくはスタッフへお尋ねください。