不妊症の主な検査

当院にて行う不妊症の主な検査をご案内いたします。

AMH

卵巣の中にある原始卵胞(卵巣内で待機している卵胞)は胎児期(妊娠6か月まで)の間に作られます。
これ以降、卵胞を生み出すことはなく加齢に伴い卵子の質・数は低下していきます。令和4年4月の不妊治療の保険適用拡大により、生殖補助医療へステップアップする際には保険で採血可能ですが、そうでない場合(保険で一般不妊治療を行う場合)は保険での採血は不可で、自費で採血すると混合診療となるため採血検査ができなくなりました)

⚫️ 年齢と卵子数についての解説動画です。

当院患者におけるAMH値分布

AMHは発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで卵巣機能が低下してくると値が下がってきます。
AMHを測定することで卵巣の予備能を知ることができ、不妊治療がいつぐらいまでできるのかの目安になります。

治療・月経周期・内服による値の変動はないため、いつでも検査できます。
当院では初診時の採血の検査項目に含まれています。

ホルモン検査

ホルモン検査

排卵に関与するホルモン値を採血して測定します。

E2(卵胞ホルモン)
卵胞の顆粒膜細胞というところから分泌され、卵胞期(低温期)に子宮内膜を厚くし排卵前に子宮頚管粘液量を増加させる作用があります。
LH(黄体形成ホルモン)
成熟した卵を排卵させ、妊娠を維持するための黄体を形成させる作用があります。
FSH(卵胞刺激ホルモン)
脳下垂体から分泌され、卵巣に作用して卵そのものと卵の入っている卵胞を発育させます。
月経開始時の値から卵巣がどれくらいの排卵能力を持っているかわかります。
P4(黄体ホルモン)
排卵した後に形成される黄体から分泌され、子宮内膜に作用して内膜の性状を変化させて胚が着床しやすい環境にします。
プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)
脳下垂体から分泌され、通常は分娩後に大量に分泌されるホルモンです。
この値が高くなるに従い、黄体機能不全・無排卵・無月経になることがあります。

初診後はまずLH、FSH、プロラクチンを検査します。
月経開始2~5日目に行います。

卵管通気検査、子宮卵管造影検査

卵管の通過性を確認するための検査で、月経終了後から排卵までの時期に行います。

卵管通気検査

卵管通気検査

子宮口から炭酸ガスを子宮の中に一定の圧力で入れて、ガスが卵管から腹腔内に出ていくときの圧力を測定し、卵管が通っているかどうかを見る検査です。

子宮卵管造影検査

子宮卵管造影

子宮内腔の異常と卵管の通過性を調べるために、レントゲン透視下に子宮口から造影剤を注入して観察・撮影する検査です。

※当院では提携している病院で受けていただく検査です。

排卵に関する検査

超音波検査

卵胞成熟過程

卵胞発育をチェックし、18mm~20mm直径の卵胞が成熟しているか検査します。

卵胞が発育していれば血中ホルモンを測定(E2、LH)し、卵子、卵胞の成熟度と排卵日を決定します。

排卵後に実際に排卵があった確認のために排卵推定日の後に超音波検査で卵胞が消失していることを確認します。

子宮鏡検査

子宮ファイバースコープ

子宮の入り口(子宮頚管)から子宮腔の中に細い内視鏡を挿入して子宮の内面を観察する検査です。

この検査を行うことで子宮内のポリープ、粘膜下にある子宮筋腫、子宮腔内の癒着などがわかります。

精液検査

精液検査の標準値

治療を進めていく上で欠かせない検査です。
早い段階での検査をお願いいたします。

オプション検査

ルーチン検査の他に当院で検査可能なオプション検査です。(このうち子宮内フローラ検査とERPeak検査については先進医療として認められ当院でも申請許可を得ていますので保険と併用して検査可能ですが、それ以外の検査は混合診療となるため完全自費診療へ移行した後にしか実施できなくなりました。

子宮内フローラ検査
子宮内の細菌叢が正常のラクトバチルスで90%以上占められているかを調べる検査です。原則高温期に子宮内の液を少量採取して細菌のDNA検査に提出します。結果が得られるのに約3週間を要します。細菌叢が崩れている場合は着床不全、流産、早産を起こすことがわかって来ています。治療として2~3ヶ月ラクトフェリンを内服していただきます。
Vitamin D
Vitamin D不足は不妊と大きく関与していることがわかっています。日本人の多くがViamin Dが不足しており、摂取により妊娠率が上昇することが指摘されています。
プロテインC、プロテインS、第12因子活性、NK細胞活性
不育症、習慣性流産に対しての詳細な検査になります。それぞれ異常が認められれば必要に応じて内服治療となります。
Th1/Th2比
習慣性流産、着床不全のオプション検査になります。ThはヘルパーT細胞のことで受精卵に対する子宮の受容性はTh細胞を介した免疫応答が担っており、Th1=細胞性免疫(細菌やウイルスを攻撃)、Th2=液性免疫(抗体産生に関与)からなっていますが、妊娠中は母体にとって異物である、受精卵、胎児を攻撃するTh1細胞が減少してTh1/Th2比が低くなり免疫寛容状態が保たれて妊娠が維持されます。ところがTh1細胞が高くなるとTh1/Th2比も高値となり免疫機構が受精卵、胎児を攻撃してしまい着床不全や流産を繰り返すと考えられています。Th1/Th2が高値の場合には免疫抑制剤であるタクロリムスというお薬を服用することによりTh1を下げてTh1/Th2比を正常化し着床を助け、妊娠を維持していくという仕組みです。
ERA(Endometrial Receptivity Analysis)検査もしくはERPeak検査
凍結胚融解移植において良好胚盤胞を複数回行っても妊娠しないケースで子宮内膜が受精卵を受け入れることができる期間「着床の窓」がずれていることが着床の時期で子宮内膜の発現遺伝子の研究でわかって来ており、実際のホルモン補充周期で予定の移植日の内膜を採取して遺伝子解析検査に提出します。この検査から着床の窓がずれている場合は移植日を予定から1日早くしたり逆に遅くしたりすることで着床が正常に成立することがあります。