医療者は臆病であれ!

僕は手術も大好きでした。開腹手術、腹腔鏡手術、いずれにしても前日もしくは当日の朝は納得の行くまで何度も何度も頭の中でシミュレーション繰り返して、それから手術に望むことを必ず自分に課していました。医師免許を持たなければ、一連の行為は「傷害」でしかありません。患者さんにとっての最善を目指すためにはどの医師でも常にやってきていることだと思います。

切っては取り、止血して縫い合わせるの繰り返し。思い切りも大事ですが、それより大事にしているのは「臆病であれ」という態度です。どんなことにも臆病で慎重でなければ必ず痛い目に遭います。だから今でもいつも臆病であることを心がけるようにしています。毎日毎日、何十年も採卵を続けていますが、いつも「出血が止まらなかったらどうする」、「感染を起こしてしまったらどうする?」といったことを必ず自分の中で確認してから採卵に入るようにしています。これだけは緩めず続けていかなければならないことだと思っています。だって、他人を傷つけて採卵するわけですから最善の策を講じて最善の結果を得るようにしないと。仕事の上ではずーっと臆病でありたいと思っています。