不妊治療における情報リテラシー

現代はインターネットやSNSの発達により、誰もが手軽に情報を検索・発信できる時代です。しかしながら、その利便性の一方で、ネット上の情報は必ずしも正確とは限らず、特に不妊症や不育症、妊娠に関する内容については、科学的根拠に乏しいものや誤解を招く表現、極端な体験談に満ちたものが散見されます。こうした「玉石混交」の情報に触れる中で、かえって不安を募らせてしまう方も少なくありません。

ただし、だからといってインターネット上の情報をすべて遮断し、情報を得ようとしない姿勢になることもまた問題です。インターネットには、専門家によって正しく発信された情報や、当事者の体験から学べる貴重な知見も多く含まれています。重要なのは、それらの情報を鵜呑みにするのではなく、「誰が」「何の根拠に基づいて」発信しているかを見極める視点、つまり情報リテラシーを持つことです。

正しい情報を得るためには、まず公的機関や医療機関が発信する信頼性の高い情報源に目を向けることが重要です。たとえば、厚生労働省、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会などの公式サイトでは、最新の医学的知見に基づいた内容が提供されています。また、不妊治療を専門とする医療機関のウェブサイトや、医師が監修した書籍・パンフレットも有益な情報源となります。

不明な点や判断に迷う情報に接した際は、自己判断せず、医師や専門家に直接相談することが最も確実で安心です。情報過多の時代だからこそ、自らの知識と専門家との対話を通じて、正しい情報を選び取り、安心して治療や妊娠に向き合える環境を整えることが大切です。その上で、医療者と情報を共有しながら一緒に治療方針を決めていく「Shared Decision Making(共同意思決定)」を意識することで、患者と医療者の双方が満足度の高い医療を実現できるはずです。